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クーリング・オフ制度②~販売による利益は返還すべき?~

前回連鎖販売取引ではクーリング・オフ制度が利用できることをご紹介しましたが、クーリング・オフを行う方法、効果については、訪問販売の場合と同じです。また、クーリング・オフ妨害があったときは、クーリング・オフ期間が延長され、再交付書面が発行された日から20日経過するまでクーリング・オフを行うことができます。

販売のため既に商品を仕入れている場合は、クーリング・オフを行ったとき、商品を返品しなければいけません。返品の費用も、訪問販売と同様に事業者負担となります。マルチ商法の商品は化粧品や健康食品などの消耗品の場合が多いですが、訪問販売と違い、消耗品に関する特別の定めはないため、たとえ使用していたとしても返品して購入代金の返還を求めることが可能です。

 

<事例15>

マルチ組織に入会したが、実際やってみるとうまくいかず、クーリング・オフをした。クーリング・オフをする前に数人に商品を販売したのだが、この販売によって得た収入も返還しなければいけないのだろうか。

 

連鎖販売取引の場合、訪問販売と異なるのが、クーリング・オフより前に商品を販売するなどして、消費者が収入を得ている場合があり得るということです。クーリング・オフしたらこの収入も返還する必要があるのでしょうか。

これについて特定商取引法では詳しい定めがないため、民法によることになります。民法では、消費者が実質的な利益を得ており、それが事業主の損失による場合は、事業者の損失の範囲内で消費者が得た利益を返還する必要があるとされています。事業者の損失によらない場合、つまり事業者も消費者も利益を得ている場合は、利益を返還する必要はありません。