企業法務担当者様向けブログ

クーリング・オフと第三者への転売

<事例37>
訪問買取で着物を買い取ってもらったが、後日思い直してクーリング・オフの通知をした。しかし買取業者から「既に他の方へ売ってしまったので、商品を返せない」と言われた。商品を取り戻すことは出来ないのだろうか。

訪問購入を行う事業所の多くは買い取った商品を転売することで利益を得ており、クーリング・オフを申し出たときには、既に商品が第三者の手に渡っていた、という事も少なくありません。クーリング・オフをするより前に商品が既に第三者に引き渡されていたとき、第三者に対して商品の返還を求めることはできるでしょうか。

商品の売り主である消費者からすれば、クーリング・オフを行うと契約は遡ってなかったことになるので、所有権は売り主にあり、第三者に対しても返還を求めることができるように思えます。一方で、こういった事情を知らない第三者からすれば、代金を支払って手に入れた商品を何の落ち度もなく取り上げられるのでは納得がいかないと感じるでしょう。

そこで特定商取引法では、クーリング・オフ期間中買取業者が第三者へ商品を引き渡す場合は、商品がクーリング・オフされる可能性があることを、第三者へ通知しなければならないと定めています。また、商品の売り主である消費者に対しても、第三者へ商品を引き渡したことを通知しなければならないと定められています。それぞれの通知に記載すべき事項も詳細に定められており、また第三者への通知は書面で行うことになっています。

通知が行われた場合、クーリング・オフを行ったときに既に商品が第三者にわたっていたとしても、返還を求めることができます。買取業者が商品を取り戻そうとしない場合は、消費者は第三者に対して直接商品の返還を求めることもできます。

しかし、通知が行われず第三者がクーリング・オフされる可能性について知らないまま商品が引き渡された場合は、売り主である消費者は第三者に対して所有権を主張することはできません。何の落ち度もない第三者の保護が優先されるためです。