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連鎖販売取引とは②~マルチ商法が規制された経緯~

前回マルチ商法のメリットについてご紹介しましたが、仕組みやメリットだけを聞くと大変すばらしい販売方法のように思えます。なぜマルチ商法は特定商取引法で規制されているのでしょうか。

マルチ商法は下階層の販売員の入会金や売り上げから、上の階層の販売員へマージンが入る仕組みになっていますが、これは裏を返せば、下の階層の販売員は上の階層の販売員に搾取されるという仕組みです。マルチ組織はピラミッド形の組織体系のため上の階層の販売員はごく一部であり、また人口が有限である以上、販売員が増え続けるということもありません。論理的に考えると、組織の大半を占める下階層の販売員は搾取され、損をするような仕組みになっているのです。

また、商品を販売するよりも販売員を勧誘した方が収入につながりやすいため、商品販売をおろそかにして販売員勧誘に邁進する人も多くいます。多くの販売員は知人・友人を勧誘しますが、勧誘を断られると自然と疎遠になりがちであり、またたとえ勧誘がうまくいったとしても知人・友人間で搾取する側と搾取される側になってしまうため、結果として人間関係を損なってしまう可能性があります。

マルチ商法は1960年代にアメリカから入ってきたビジネスで、一時は多くの人が組織に参加していましたが、その一方で経済的に破綻し、友人や家族の信頼も失って、離婚や自殺に至る被害が多発し社会問題になりました。こうした経緯から、1976年に「訪問販売等に関する法律」が制定された際、訪問販売、通信販売と併せて規制されました。

「マルチ商法」ときくと、悪徳商法のようなイメージがあるかもしれませんが、規制の範囲内で行う限りマルチ商法は違法ではありません。しかし、あくまでもビジネスなので、必ず大金が稼げるということはなく、リスクもあることを理解しておく必要があります。