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別段の定めをおかずに労働条件を変更するには~無期転換前の労働条件引き下げは有効?~

無期転換を行うと、原則無期転換前の労働契約と同じ内容で労働契約を締結したことになります。それでは、無期転換申込権が発生する前の労働契約を締結する際に労働条件を引き下げておけば、別段の定めをおかなくても実質的に無期転換後の労働条件を引き下げることが出来るでしょうか?

別段の定めをおかずに労働条件を変更するには~無期転換前の労働条件引き下げは有効?~

無期転換前の労働条件を引き下げることで、実質的に無期転換後の労働条件を引き下げられる?

労働契約で定められる労働条件は、使用者と労働者が合意することで変更することができます。労働条件を引き下げる場合でも、労働者が合意すれば労働条件を変更できるため、このような方法で無期転換後の労働条件を引き下げることは可能です。
しかし、労働条件を引き下げる、つまり労働者にとって不利益に変更するには、単に労働契約を結ぶだけでなく、不利益の内容や程度について労働者へ丁寧に説明し、検討する時間を与えるなど労働者が自由な意思に基づいて同意したと認められるような手続を踏む必要があります。そして単に給与が低くなるなど明らかに以前より悪い条件では、労働者は当然同意しないため、現実的には難しいと考えられます。

労働条件の引き下げに応じない労働者の雇い止め

労働条件を引き下げた労働契約を結ぼうとするとき、この時点では無期転換申込権は発生しておらず、単に有期労働契約の更新になります。それでは、更新後の労働条件に同意しない(労働条件の引き下げに応じない)労働者は雇い止めに出来るでしょうか。
労働契約法第19条では、「有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、かつ、その契約期間満了時の雇い止めが解雇と社会通念上同視できると認められる」とき、使用者が契約を更新しないことが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」には、雇い止めは認められない、と定めています。無期転換申込権の発生が見込まれる従業員であれば、その時点で有期労働契約が反復更新されていることが多く、また労働者に不利益な契約の締結に応じないという理由は合理的と認められないため、雇い止めは難しいと考えられます。