不特定物売買の場合、前回ご紹介したとおり、目的物の特定時に所有権が移転します。
持参債務の場合は、納品場所に持参して提供された時点で移転するというわけですが、この点、注目すべき判例があります。
【最高裁 昭和36.12.15】
提供された目的物に瑕疵があった場合、買主がその瑕疵を認識しつつ引渡を認容した等の事情がない限り、買主は債務の本旨に従った履行がないことを理由に完全履行請求を行うことができるとした。
この判例に従いますと、特約がない限り、所有権移転の時期が不明確になってしまうケースが出てきます。
不明確な状況を回避するためにはどうしたらよいのでしょうか。
買主が商人の場合は、所有権移転の時期は、買主の目的物受け取り後、検査に合格したときと特約を定めるのが当事者間にとって公平でしょう。
商人は、目的物が不特定物であっても、売主が引渡を行ったときは、買主はその受取をした目的物について遅滞なく検査を行う義務があります(商法第526条第1項)ので、買主による検査が完了して瑕疵が発見されなければ、買主は目的物を受け入れた、売主としては履行が完了したと期待するのが通常と考えられるからです。