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無期転換を避けるには④~就業規則に契約更新の上限を定める~

以前有期契約労働者が「有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由がある」場合には、雇い止めが認められないとご紹介しました。そこでこのような期待を抱かせないために、「契約更新は4回まで」「通算契約期間5年まで」といった条項(更新上限条項)を就業規則や労働契約書に定めておいてはどうでしょうか?

この方法を取る場合、更新上限条項を就業規則と労働契約書のどちらに定めるのか、また対象となる従業員が更新上限条項を定める前から雇用されているか、新規に採用した従業員かによって、有効かどうかが異なります。

新規に採用した従業員への対応

更新上限条項を定めた後新規に採用した従業員に対しては、労働契約書・就業規則のどちらに更新上限条項を定めた場合も有効と考えられます。就業規則で定める場合は、就業規則を周知していることが条件になります。

既存の従業員への対応、労働契約書で定める場合

更新上限条項を定める前から雇用している従業員については、雇い入れ時に「契約は原則更新する」と説明をしていたり反復して契約更新していたりと、既に雇用継続の合理的期待が生じている場合がほとんどです。このようなときに更新上限条項を労働契約書へ定めたとしても、それだけで雇用継続への合理的期待が失われたとはいえません。また、契約更新時に更新上限条項を盛り込んだ労働契約書に署名・押印を求める対応は、従業員に「更新上限条項に同意しなければ契約更新されない」という印象を与えるため、このような対応で得た同意は無効と判断される可能性があります。

既存の従業員への対応、就業規則で定める場合

以前ご紹介したとおり、既に締結している労働契約について、就業規則の変更によって労働条件を変更する際は、変更の内容が「不利益の程度、変更の必要性、内容の相当性、労働者の意見を聴取したかなどの事情に照らして合理的なもの」でなければいけないと定められています。更新上限条項の設定は従業員に対して不利益な変更であり、また無期転換を避ける目的は合理的と認められる可能性は低いと考えられます。更新上限条項を就業規則で定めるだけでは、既存の従業員への対応としては不十分といえるでしょう。

更新を期待させる言動、例外の運用があった場合

更新上限条項を有効に定めたとしても、その後に更新を期待させる言動があった場合や、優秀な人物だけを更新上限を超えて契約更新するといった例外の運用を行った場合、労働者が契約更新の期待を抱くことに合理的な理由があった、と判断され、雇い止めが認められない可能性があります。条項を定めるだけでなく、その後の運用についても注意が必要です。