前回までご紹介してきましたように、日本の著作権法は著作権者の許諾なく利用できる場合を定めています(制限規定)。
しかし、これでは昨今のデジタル・ネットワーク化の急速な進展により、どんどん生まれる新しい創作や利用の態様への対応を十分にすることができません。何かが起きてから法律を改正するようでは、遅いといえるでしょう。
そこで、アメリカの著作権法107条のフェアユース規定のような条文を日本でも設けるべきではないかと議論が起こりました。
フェアユース規定とは、その著作物を公正利用する行為には著作権の効力は及ばないという包括的な規定で、一定の包括的な考慮すべき要素を定めておき、権利を制限するべき利用に該当するか否かは裁判所の判断に委ねる方式をとります。
この規定には、新しい利用方法などへの迅速かつ柔軟な対応ができる一方、条文を見てもどんな行為であれば制限されるのかが分からないといったデメリットもあります。文化庁の審議会でも賛否が分かれ、2012年の著作権法改正の際は新たな個別の制限規定が設けられるに留まり、フェアユース規定は今も導入には至っていません。