通信販売はこれまで見てきた訪問販売とはどのような点が異なるのでしょうか。
大きな特徴は、クーリング・オフ制度がないことです。特定商取引法の規制の対象である7つの類型のうち、クーリング・オフ制度がないのは通信販売だけです。
通信販売は、消費者が広告を見て選択する余裕のある取引であり、訪問販売などに比べ、不意打ち性がないと考えられています。そこで、規制の内容としては、消費者の判断に必要な事項を広告に表示するよう義務づけることが中心で、後は消費者が広告をよく見て判断すればよい、とされています。
たとえば、通信販売では、クーリング・オフ制度がない代わりに「返品制度の有無」を広告へ表示することになっていますが、「返品できない」と表示することも認められています。返品可の場合は、返品方法や返品を受け付ける日数、返品の際の費用負担などを表示しなければいけませんが、これらの条件も自由に設定することが認められています。返品制度に納得がいかない場合は、その販売業者からは購入しないだろう、という前提になっているのです。
ただし、返品制度について特に表示がない場合は、その契約にかかる商品の引渡しを受けた日から数えて8日以内であれば、消費者は事業者に対して、契約申込みの撤回や解除ができます。このとき返品の送料は消費者負担となっており、事業者負担であるクーリング・オフ制度とは異なることに注意が必要です。