<事例31>
行政書士の資格取得講座を開催している団体から勧誘があり、資格が取れたら仕事をあっせんすると言われたので申し込んだ。しかし教材が難しくとても合格できなさそうだったので、クーリング・オフの申出をしたところ、「行政書士は公的な資格なので事業者で認定するものではないし、紹介する仕事は行政書士の資格取得講座の練習問題を作成したり添削したりする仕事なので、業務提供誘引販売取引にはあたらず、クーリング・オフできない」と断られた。
業務提供誘引販売取引では物品の購入の他に、資格取得講座などの申し込みを勧誘する場合があります。「資格取得できたら仕事を紹介する」というもので、勧誘時にはいかにも簡単に資格が取れるように説明しますが、いざ講座に申し込むと講座の内容がずさんだったり、資格試験の難易度が高かったりして、なかなか合格できない、という被害があります。行政書士の他に、トリマースクール、ネイルアート、エステなどの資格について被害が発生しています。
クーリング・オフを拒絶する事業者の言い分としては「公的資格なのだから資格取得できないのは本人の問題であって、契約に違反していない」ということです。しかしクーリング・オフは契約に違反しているかにかかわらず契約を取り消すことが出来るため、契約の内容が業務提供誘引販売取引に該当していれば、拒絶することはできません。
また事例のように「行政書士の資格取得講座の練習問題を作成したり添削したりする仕事」を紹介する場合、仕事の内容が行政書士の独占業務ではないので、業務提供誘引販売取引にはあたらないといってクーリング・オフを拒絶する事業者もあります。事例の仕事は行政書士資格の独占業務ではないものの、講座で勉強した知識を生かした仕事内容であるため、業務提供誘引販売取引に該当します。事例の場合、事業者の拒絶はクーリング・オフ妨害にあたり、事業者の説明を信じてクーリング・オフをあきらめた場合は、期限を過ぎていてもクーリング・オフが可能です。