企業法務担当者様向けブログ

訪問購入に対する規制③~氏名等の明示義務と再勧誘・不当な勧誘行為の禁止~

<事例36>

「古着買取」のチラシを見て、ちょうど処分したい古着があったので、電話をして来てもらうことにした。当日引き取ってもらうつもりの古着数点を見せたが、それには目もくれず「他に貴金属や宝石はありませんか」と言われ、断っても執拗に勧誘された。

 

特定商取引法では消費者の意に反する勧誘を禁止しており、さらに勧誘に先立っては、消費者から勧誘の同意を得る必要があり、事業者の氏名等や訪問目的、購入しようとする物品の種類を明示しなければならないと定められています。消費者から要請を受けて訪問した場合でも同様です。事例の場合、古着買取の勧誘については消費者の同意が得られていますが、貴金属については同意がないため、飛び込み営業ということになり禁止行為にあたります。

また、訪問販売と同様に再勧誘も禁止されています。消費者が契約をする意思はないことをはっきりと示したときには、そのまま居座って勧誘を継続することや、日を改めて訪問することが禁止され、事業者はすぐに帰らなければなりません。これは消費者から要請して訪問を受けたときでも同様です。しつこい勧誘に困ったときは、勧誘を受けないこと、契約する意思はないことをはっきりと伝えることが重要です。

また特定商取引法では、勧誘の際に重要な事項についてわざと隠したり、事実と異なることを告げたりする不当な勧誘行為を禁止しています。ただし、訪問購入ではほかの取引類型と異なり、これらの行為による取消制度がありません。クーリング・オフ期間を経過した後に契約を取り消したい場合は、消費者契約法の適用によることになります。

 

※消費者契約法・・・消費者と事業者との間で締結された労働契約以外の全ての契約に適用される、消費者の利益保護を目的とした法律。不実告知(重要な事項について事実と異なることを言う)や不利益事実の告知(利益になることだけを言って重要な項目について不利益になることを故意に言わない)といった不当な勧誘により、誤認・困惑して契約してしまった場合、契約を取り消すことができます。