訪問購入は、自宅という閉鎖的な空間で行われるため強引な勧誘が行われがちであり、また買い取りの価格が適正なのか比較材料の少ない状況での取引です。冷静に判断する時間を確保するため、契約書面を受け取ってから8日を経過するまでの間、クーリング・オフを行うことができます。クーリング・オフは理由に関わらず、消費者からの一方的な意思表示で行うことが出来るため、単に「思い出の品なのでやはり手放したくない」という理由でも可能です。クーリング・オフを行うと、商品代金を返金し、商品の返却を求めることができます。
訪問購入の場合特徴的なのが、2017年12月7日の回でご紹介した、クーリング・オフ期間中の商品の引き渡し拒絶制度です。消費者は契約を交わした後でも、クーリング・オフ期間が経過するまでは買取業者への商品の引き渡しを拒絶することができます。
買取業者は、商品を受け取るとき、クーリング・オフ期間は引き渡しを拒絶できる旨を消費者へ告げなければいけません。また、契約書面の記載事項にも商品の引き渡しの拒絶に関する事項が含まれています。引き渡しの拒絶についてウソの説明をすることや、威圧して商品を引き渡させることは禁止されています。
なお、クーリング・オフ妨害があった場合は、訪問販売の場合と同様に、クーリング・オフ期間が延長されます。
訪問購入では、ウソの説明による勧誘や重要事項をわざと隠して勧誘を行うことを禁止行為としているものの、他の取引類型のような取消制度はありません。そのため、クーリング・オフ期間経過後は、消費者契約法の民事ルールに基づいて契約の取消を行うことになります。消費者契約法は消費者と事業者の契約全般を対象として規制する法律で、ウソの説明による勧誘や重要事項をわざと隠して行った勧誘を信じて契約した場合、契約を取り消すことができる制度があります。