従業員が故意または過失により会社に損害を及ぼした場合には、会社は損害賠償を請求することができます。(民法709条)また、従業員が債務不履行により損害を及ぼした場合にも、会社は損害賠償を請求することができます。(民法415条)もっとも、このようなときには、会社は懲戒処分で対処するというのが一般的です。
従業員に重過失がある場合には、懲戒処分が課されたとしても、従業員の損害賠償責任が免責されるわけではありません。また、同時に、資力の十分ではない従業員に、会社が損害賠償請求をすることを、無制約に認めるのも適切ではないでしょう。
会社は、保険に入るなどの策を講じて、損害のリスクを回避することができやすい立場にもあります。その意味で、従業員の損害賠償責任は、重過失がある場合に限定し、会社が賠償を求める際にも、従業員の負担能力等も踏まえて、ある程度、抑制的であることが望ましいでしょう。