特定商取引法の規制には、特殊な取引方法を扱う業者を規制する「業法」と、違反行為によって契約させられた消費者の救済を目的とする「当事者ルール」の2つの性格があります。
特定商取引法は、当初は業法として制定されました。
貸金業法、銀行業法、旅行業法といった多くの業法で、開業時に許可や登録を求める開業規制を行うのに対し、特定商取引法では開業規制がなく、だれでも開業することができます。
事業者はルールを守ることを義務付けられ、違反すると調査・改善命令・事業停止・事業者名公表といった行政処分や刑事罰を受けます。悪質な業者を処分対象とすることで、業界全体の事業活動が適正化されることを目的としているのです。
一方、消費者救済の手段については、従来クーリング・オフを基本としていましたが、これは「消費者が一旦落ち着いて考える時間を設ける」ことを目的とした制度のため、適法な取引方法で契約を行った場合でも利用できる点で、「当事者ルール」とは少し違っていました。
しかし、2004年の改正で、販売業者が契約時に重要な事項について隠したり嘘をついたりした場合には、クーリング・オフ期間を過ぎても契約を取り消せる制度が導入され、これによって当事者ルールが追加されました。
また、2008年改正より、日常生活において通常必要と考えられる分量を著しく超えた販売(過量販売)に対し、1年間契約解除できる権利を認めました。これは高齢者を狙って、生活が破綻するまで同種の商品を次々と契約させる被害が多発したため、このような消費者を救済するための制度です。