前回ご紹介した事例25の場合、「仕事を紹介する契約」と「パソコンと専用ソフトを購入する契約」は本来別々の契約です。消費者の支払った代金に対し、パソコンと専用ソフトは確かに引き渡されているため、「パソコンと専用ソフトを購入する契約」は問題なく成立しており返品できる余地はないように思えます。一方で、「仕事を紹介する」という条件でなければそもそも商品を購入しなかったのであり、不要な商品に対し高額な代金を支払うのでは、消費者にとって不利益が大きいといえるでしょう。
そこで特定商取引法では、次の①~④の条件を満たす場合、事例のような本来別々の契約を、抱き合わせで一体の契約として取り扱うと定めています。
①商品の販売又は役務の提供の事業であること
②業務提供利益が受けられると相手を誘引したこと
③特定負担を伴う契約であること
④契約する者が事業でなく個人であること
②の業務提供利益とは、仕事をすることによって得られる利益のことですが、この仕事とは、事業者が提供してくれた仕事であり、事業者から購入した商品やサービスを利用する仕事のことをいいます。
③の特定負担とは仕事をするための契約の際に消費者が負担する出費のことです。事例のパソコンと専用ソフトのような商品購入の費用はもちろん、技術指導の講座の料金・保証金・加盟金など名目は問いません。契約に「伴う」かどうかは実態により判断されるため、たとえ契約書に商品購入について記載がなくても、実際に出費が必要であれば、特定負担が認められます。