これまでそれぞれの取引類型で、不当な勧誘行為の例や、禁止されている勧誘行為についてご紹介してきました。被害にあったとき消費者それぞれの被害は民事ルールによって回復することができますが、悪質な事業者をそのままにしていては、次々と新たな被害が発生してしまいます。事業者に不当な行為を止めさせる方法はないのでしょうか。
民事訴訟の原則的な考え方では、不当な行為を行う事業者に対し消費者がその行為をやめるよう請求するには、消費者(被害者)が事業者(加害者)を訴える必要があります。しかし、消費者と事業者の間には情報の量や質・交渉力の格差があることや、訴訟には時間・費用・労力がかかり、一消費者には負担が大きいという問題がありました。
そこで特定商取引法では、事業者が特定商取引法の定めに反して不当な行為を行っているとき、適格消費者団体がその行為を止めるように請求できる制度(差止請求)を定めています。
この差止請求は消費者契約法で定められている消費者団体訴訟制度の1つです。消費者団体訴訟制度とは、内閣総理大臣が認定した消費者団体(適格消費者団体)が不特定多数の消費者に代わって事業者に対する訴訟等をできる制度です。消費者団体に対し、不特定多数の消費者に代わって、トラブルの原因となる行為を行わないよう事業者へ請求できる権限を与えたのです。
差止請求ができるのは、事業者が契約の締結等に際し、以下のような行為を不特定多数の消費者に対し現実に行っているか、行うおそれがあるときです。取引類型によって差し止めを請求できる行為が異なりますが、特定商取引法の全ての取引類型でこの制度を利用することができます。
・誇大な広告を表示する行為
・事実と違うことを告げる行為
・故意に事実を告げない行為
・威迫して困惑させる行為
・消費者に不利な特約や、契約解除に伴い損害賠償額の制限に反する特約を含む契約の締結行為