無期転換の受け入れにあたって就業規則を整備する場合は、就業規則を定めるタイミングによって、その条件が適用される従業員の範囲が異なるため注意が必要です。
就業規則は個別の労働契約よりも優先されるため、企業は就業規則を整備することで、従業員の労働条件を定めることができます。しかし、就業規則を定める手続は過半数労働組合(又は労働者の過半数代表者)の意見聴取のみで、従業員が個別に意見を述べたり交渉したりする機会はありません。労使の合意によって定めたはずの労働契約が、その後一方的に変更されるのでは、従業員は納得がいかないでしょう。そこで、労働契約の締結よりも後に就業規則が変更される場合には、労働条件を変更できる条件がより厳しく定められています。
就業規則の整備後に無期転換の申し込みをした従業員
無期転換の申し込みを行うと、期間の定めのない労働契約が締結されますが、その申し込みが就業規則を整備した後であった従業員については、就業規則に定めた労働条件が合理的なものである限り、「労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件による」ものになります。(労働契約法第7条)
就業規則を整備前に無期転換の申し込みをした従業員
就業規則の整備より前に無期転換の申し込みをした従業員については、労働契約を締結した時点(無期転換の申し込みをした時点)では、就業規則にどのような労働条件が定められるのか知ることができません。このような場合は、就業規則を新たに定めたとしても、就業規則の変更と同様に考えることになります。労働契約法第10条では、就業規則の変更によって労働条件を変更する際は、変更の内容が「不利益の程度、変更の必要性、内容の相当性、労働者の意見を聴取したかなどの事情に照らして合理的なもの」でなければいけないと定められています。整備後の就業規則に定めた労働条件が労働者にとって不利益なものである場合には、単に就業規則を変更しただけでは労働条件を変更できない可能性があることに注意が必要です。