無期転換ルールは、従業員が申し込むかどうかを選択することが出来ます。それでは、無期転換申込権が発生する前に、従業員から無期転換を申し込まないという同意を取っておけば無期転換を避けられるでしょうか。
(事例)Rさんは、次回更新すると契約期間中に無期転換申込権が発生する。会社は無期転換を避けるため、契約更新時の労働契約書に「契約期間中に、無期転換の申し込みをしない」という条項を追加し、Rさんの同意を得るつもりである。
無期転換を申し込まない同意が有効になる場合
労働契約法では、労働契約は労働者と使用者が対等な立場における合意によって締結する、と定めており、労働者に権利を放棄させる合意自体が禁止されているわけではありません。有期契約労働者の中には、特別の技術・経験などを有し、あえて有期契約を締結することでよりよい条件の労働契約を締結する、いわゆる有期プレミアムの労働者もいますが、このような労働者が無期転換申込権を事前に放棄することを交渉材料にする可能性もあるためです。このような本人の真意から出た同意については有効と考えられています。
契約更新時に得た無期転換を申し込まない旨の同意は有効か
しかし事例のような場合、Rさんは「無期転換の申し込みをしないことに同意しなければ契約更新してもらえない」と感じ、本人の真意に反して無期転換の同意をしてしまう可能性があります。雇い止めの不安をなくすための無期転換ルールであるにもかかわらず、雇い止めの不安から制度を利用できないのでは、制度の意味がなくなってしまうといえるでしょう。そこで、通達(平成24年8月10日基発0810)ではこのような対応は、無期転換ルール「の趣旨を没却するものであり、こうした有期契約労働者の意思表示は、公序良俗に反し、無効と解されるものである」としています。
無期転換申込権の放棄の効力
また、無期転換申込権の放棄について有効に同意を得た場合でも、同意を得た契約期間が満了した後さらに契約を更新すると、新たな無期転換申込権が発生するため、無期転換申込権の放棄の同意の効力は及びません。このような場合、新たに同意を得る必要がありますので、注意が必要です。