誠実労働義務
就業規則では、「誠実に」職務を遂行する義務(誠実労働義務)を定めている実例が少なくありません。こうした規定が具体的に紛争になるのは、労務そのものは上司の指示どおり行われているが、その態様面で問題がある場合です。(例:組合バッジを装着して仕事をする、政治的要求を掲げた腕章をつけて仕事をする、など)これは「職務専念義務」の問題として議論されることもあります。
会社は、業務に関する様々な命令を発するものであり、従業員はそのような命令についても原則として従わなければなりません。しかし、業務上の必要性に基づかない命令、違法なものと判断される業務命令には、従う義務はありません。また、本来の労務についての指示であっても、従業員の生命・身体に対して労働契約上予想されていない危険をもたらす可能性があるような場合も同様です。
職場秩序の維持に言及する就業規則もあります。判例上は、より広く、従業員には企業秩序を遵守する義務があるとされています。つまり、労働契約上の義務として単に労務に従事していればよいというわけではなく、さらに企業という組織体に組み込まれた「従業員」としての立場から、企業の定立する秩序に服さなければならないとされています。