前回ご説明しましたとおり、供託と自助売却の制度には弱点があります。
ですので、実務では売買契約において「売主による催告を不要とし、競売によらず任意に商品等を処分できる」とする特約を結ぶことがあります。このような特約を定めた条項を任意処分条項といいます。この条項が役立つ場面は具体的には下記のような場面です。
継続的売買において、買主に一定数量の商品引取義務があるにもかかわらず、商品販売が予定通りに行かないため在庫が余ってしまったり、資金繰りが厳しいために買主が商品・製品・原材料等の仕入れを制限せざるを得ないことがあります。このような場合、買主から明確な引取り拒否の意思表示があるわけでもなく、納入日を引き延ばされてしまうと、売主は商品等を第三者に処分することができません。商品代金の入金もないため、資金繰りにも影響が出てしまいますね。このような場合に備えて、任意処分条項を予め定めておくと良いでしょう。
ただし、この条項は売主に一方的に有利な条項です。売主が強い立場の契約でなければ設けることは難しいでしょう。