特定商取引法は、マルチ商法を禁止もしていなければ、開業規制もしていません。それは、マルチ商法があくまでビジネスであるためです。それでは、どのような点が問題で、規制されているのでしょうか。
1つめの問題点として、事実と異なる勧誘や強引な勧誘が多いことがあげられます。典型的な誘い文句として、「自分より下の販売員を勧誘すれば、楽して儲けられる」というものがありますが、ビジネスである以上必ず儲かるということはなく、むしろ利益を得るのが難しい販売方法といえるでしょう。しかしこのような事実は、複雑な組織の仕組みや巧妙な勧誘によって気付きにくくされており、過去に多くの被害が発生する原因となりました。
また、販売員になる段階で特定負担などの出費を伴うため、初期投資を回収するまでは、と途中で抜け出しにくい心理状態になるのも問題点の1つといえます。「初期投資はすぐに回収できる」と勧誘されることが多いですが、実際には全く収入がないことも少なくありません。この問題点に対する救済策としてクーリング・オフ、取消制度、中途解約の制度が設けられています。
さらに、消費者自身が勧誘行為を行うことも問題点の1つです。連鎖販売取引では、勧誘に関する規制があり、規制は末端の販売員でも対象になります。消費者が自身の勧誘されたときの誘い文句を信じて同じように勧誘を行っても、いつのまにか加害者側に回ってしまう可能性があるのです。マルチ商法は学生が販売員となるケースも多く、過去には違法な勧誘を繰り返した学生が行政指導を受けた例もあります。