まず、従業員が労働契約上の義務に違反して使用者に損害を与えた場合、従業員は債務不履行に基づく損害賠償責任を負います。また、従業員の行為が不法行為に該当する場合、不法行為に基づく損害賠償責任も負います。
一方で、使用者は従業員の働きにより利益を得ている以上、業務中に発生した損害をそのまま従業員に負担させることはできず(報償責任の原理)、負担割合は慎重に検討しなければなりません。
過去の判例によれば、使用者が従業員へ損害賠償を請求できるのは、従業員の故意・重過失が認められる場合に限定されます。また、重過失が認められても、故意・過失の程度や使用者の管理体制も考慮し総合的に判断され、従業員の損害賠償責任は、信義則上、制限される傾向にあります。
では、貸与したPCなどの端末を紛失し機密情報を流出させてしまった従業員に対して、使用者は損害賠償を請求することができるのでしょうか?
次回に続きます。