前回まで、無期転換を受け入れる場合どのような対応が必要かご紹介してきましたが、企業側としては、できれば無期転換を受け入れたくない、なんとか無期転換を避ける方法はないのか、と考えている方もいらっしゃるかも知れません。
無期転換を避けるために取られることの多い対策について、いくつかご紹介した上で、どのようなリスクがあるか、気をつけるべき点はどこかご紹介します。
クーリングを意図して派遣や請負契約に切り替える場合
(事例)Pさんは株式会社シノハラに有期契約労働者として勤務しており、次の契約更新をすると無期転換申込権が発生する見込みである。株式会社シノハラは、Pさんに無期転換申込権が発生するのは望ましくないため、クーリング期間の6ヶ月だけPさんを系列グループ内の派遣会社H社に移籍させ、H社から株式会社シノハラへの派遣社員として、これまでと同じ業務を行わせようと考えている。
無期転換ルールは、同一の使用者に雇用されていることを条件にしているため、使用者(契約の主体である法人)が変われば契約期間は通算されなくなります。事例のように、従業員を派遣会社へ移籍させれば、「同一の使用者」に雇用されていないことになるので、無期転換を避けられそうです。また、クーリング期間として必要な6ヶ月経過後であれば、再び株式会社シノハラで雇用しても通算契約期間はゼロからカウントされることになります。
しかしこのような対応について通達(平成24年8月10日基発0810)は、「使用者が、就業実態が変わらないにもかかわらず、無期転換申込権の発生を免れる意図をもって、派遣形態や請負形態を偽装して、労働契約の当事者を形式的に切り替えた場合は、法を潜脱するものとして、通算契約期間の計算上『同一の使用者』との労働契約が継続していると解される」としています。外形上は派遣や請負契約に変わっているものの、業務内容は全く変わらないような場合、「同一の使用者」と労働契約が継続していると解されて、期間が通算される(=無期転換申込権が発生する)可能性があります。