前回説明したように所有権留保特約を交わしたものの、買主が倒産してしまった場合はどうなるのでしょうか。この点について述べた判例があります。
【最判平22.6.4】
自動車販売会社から自動車を購入する際、買主は信販会社の自動車ローンを利用して、その信販会社が売主に代金の立替払いを行った。信販会社は買主への債権担保のために売主から自動車の所有権の移転を受けたが、移転登録を受けず、登録は売主のままだった。その後、買主が小規模個人再生による再生手続開始の決定を受けたので、信販会社が別除権の行使として当該自動車の引渡を申し出た。最高裁は民事再生法第45条に照らし、別除権の行使が認められるためには再生手続開始の時点で信販会社自身を所有者とする登録がされていなければならないと判示した。
つまり、買主が倒産し、破産管財人が選任された場合は、売主が代金未払いの目的物の所有権を主張するためには対抗要件が必要になるということです。