会社外での個別労働紛争処理制度には、裁判所における制度と裁判所以外の機関における制度とがあります。利用にあたっては、強制力の有無、迅速性、費用面など、各制度の内容や特徴をよく理解しておくことが大切です。まずは裁判所における制度を見てみましょう。
○保全処分
保全処分とは、訴訟(訴え提起から判決確定まで多くの時間と手続きを要する)による権利の実現を保全するため、権利を主張する者に、暫定的に一定の権能や地位を認める簡易迅速な手続です。
保全処分の典型例としては、解雇された従業員が、解雇は無効であるとして会社に対して訴訟を提起する前に、
・従業員たる地位を仮に定める処分(地位保全仮処分) と
・賃金の仮払いを命じる仮処分(賃金仮払仮処分)
を申し立てる場合が挙げられます。