2016年9月8日の回でご紹介したとおり、特定商取引法には、業法と当事者ルール2つの性格があります。
業法の規制に違反した場合、罰金や業務停止命令、事業者名公表などの行政処分が行われることがありますが、2016年改正より、新たに業務禁止命令制度が創設されます。
従来、特定商取引法の規制に違反した業者に対する行政処分として、新たな勧誘等を禁じる業務停止命令が出されることがありましたが、会社法改正によって法人格の取得が容易になったことから、業務停止命令を受けた会社の役員が新たな会社を立ち上げ、ノウハウや従業員を新たな会社に移転して、以前の会社と同様の違反行為を繰り返していることがわかってきました。
このような営業は、会社という法人格が異なるだけで、実質は元の会社が営業を続けているのと同じであり、業務停止命令をすり抜ける悪質な行為です。このような営業が横行すれば、行政処分によって事業の適正化を期待することはできなくなってしまうでしょう。
そこで、業務停止命令よりさらに重い処分である業務禁止命令制度が創設されることになりました。この処分は、業務停止が命じられた法人の役員等について、業務停止の範囲内の業務を新たに開始することを禁止するものです。業務停止を命じられたのが個人の場合は、同業種の法人の役員になることを禁じる指示を出すこともできます。(指示は業務停止の前段階の行政処分です。指示が出された場合、その内容は公開されます。)業務禁止命令に違反した場合は懲役・罰金などの罰則が課されます。
尚、業務禁止命令は訪問販売だけでなく、全ての取引類型で命じられる可能性があります。